「唄う六人の女」

作品名唄う六人の女
公開年2023
監督石橋義正
原作
主な出演者竹野内豊、山田孝之、水川あさみ、アオイヤマダ、服部樹咲、萩原みのり、桃果
上演時間112分
評価3.5     
感想 映画「唄う六人の女」は、森の奥深くを舞台に、正体不明の「六人の女」と、迷い込んだ男たちの関係を描く異色のサスペンス映画です

美しい自然描写とは裏腹に、静かで不穏な空気が全編を包み込み、観る者の感覚をじわじわと侵食していきます
 

 
父の死をきっかけに、先祖代々の土地を整理するため故郷へ戻った萱島(竹野内豊)

その土地を譲り受ける予定の宇和島(山田孝之)と山道を車で進む途中、二人は事故に遭い意識を失います

目を覚ました先は、人里離れた森の奥。そこでは六人の女たちが、彼らを逃げ場のない空間へと閉じ込めていました

怪しくも妖しいその空間で、男たちは翻弄され、じわじわと精神を追い詰められていきます
 

 
本作の見どころは、「監禁サスペンス」という枠を超えて「美しさ」と「不気味さ」が同居する世界を映像化している点です。静かな音響、森の緑、そして六人の女性が発する目線が、観る者の心を揺さぶります

六人の女は、単なる「集団」としてではなく、一人ひとりが確かな個性と魅力をまとった存在として描かれています

感情を露わにする者、穏やかな優しさで距離を詰める者、静かな圧で相手を支配する者、その振る舞いの幅が、場の空気をつねに揺らし続けます

そして、この不穏な多層性を成立させているのが、水川あさみをはじめとするキャスト陣の抑制の効いた演技です

視線や間、声のトーンといった細部で「何を考えているのか分からない」感覚をにじませ、説明を排した演出と見事に噛み合っていきます

加えて、本作の緊張感を際立たせているのが、竹野内豊と山田孝之が演じる二人の明確な対比です

竹野内演じる萱島は、父の死と土地の問題に向き合いながらも流されるように状況を受け止めていく、どこか受動的な存在。一方、山田演じる宇和島は、利己的で支配的、自らの欲望のままに行動する能動的な人物として描かれます

特に、山田はこの役を一切のためらいなく演じ切り、同情の余地を残さない「徹底した嫌な男」として物語をかき乱していきます。その能動性があるからこそ、六人の女との関係はより危うさを増し、物語は不穏な方向へと転がっていきます

受け身で耐える男と、欲望で踏み込んでいく男、この対照的な二人の在り方が、作品全体のテーマとミステリー性を強く浮かび上がらせています
 

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本作は、明確な答えや分かりやすい恐怖を求める人よりも、曖昧さや違和感、じわじわと心に残る余韻を楽しみたい人におすすめの一本です

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