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「孤狼の血」

作品名孤狼の血
公開年2017
監督白石和彌
原作柚月裕子
主な出演者役所広司、松坂桃李、真木よう子、江口洋介
上演時間125分
評価4     
感想柚月裕子の小説をベースに映画化された。これまで柚木裕子の作品は、第2回本屋大賞で第2位となった「盤上の向日葵」を読んだことがある。将棋の駒をある殺人事件の重要な手がかりに据えたストーリー設定と人物描写が鮮やかで、すぐに感情移入し読むことができた。将棋を知らない人でも全然平気で、引き込まれる作品なので、こちらの小説もぜひ読んでほしい。

本作品はストーリーの面白さはもちろんのこと、出演者の鬼気迫る演技が印象的である。融通の利かない新人からしだいに清濁併せ吞む刑事へと変貌を遂げる松坂桃李。暴力団組織に属する人物の凄みを演じ、新境地を開いたと言われる江口洋介や竹野内豊。執念深そうな雰囲気を醸し出す新聞記者の中村獅童、貫禄たっぷりの組長・石橋蓮司などなど。キャラが立った人物が多く登場する。しかし、その中でも群を抜いてイイ味を出しているのは役所広司。型破りのベテラン刑事で暴力団組織とズブズブの関係だが、反面、市民の安全を守るため、違法すれすれの(時には一線を越える)捜査を行い、暴力団組織に立ち向かう。そんなダーティで、人間臭さぷんぷんの危うい主人公を見事に演じている。

役所広司と言えば、昔、NHK大河ドラマ「徳川家康」に織田信長役で出演した時のことを強烈な印象として記憶している。当時は全くの新人で、最初登場した際は「誰この人?」的な感覚であった。織田信長はもっと有名な俳優に演じてもらいたかったとすら思ったものである。しかし、その野性的な演技は信長のイメージそのもので、登場の最終回となる「本能寺の変」の頃には、役所広司で、改めて1年、NHK大河ドラマ「織田信長」を撮ってほしい、そう思うほどのハマり役であった。それから数十年、織田信長を演じる俳優は数あれど、渡辺謙も良かったが、役所広司がNo.1という超個人的なランキングは現在も変わっていない。

今回の「孤狼の血」で演じた刑事も間違いなくハマり役であった。できる事なら、パイレーツ・オブ・カリビアンの主人公ジャック・スパロウのように、もう何作か、この個性あふれる主人公の活躍を見てみたい。本作品を見終わったとき、そんな感傷に浸った秀作である。


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ストーリー

広島の呉原では、暴力団組織の尾谷組と加古村組が勢力争いを続けている。呉原東署の刑事・大上章吾(役所広司)は、新人の日岡秀一(松坂桃李)とともに、加古村組の経理担当・上早稲二郎(駿河太郎)が失踪した事件を調べている。

昨日服屋で買うたシャツがビチョビチョじゃぁ

大上は日岡に、パチンコ店にいる加古村組の組員に喧嘩を吹っかけてこいと命じる。

それぐらい出来ないとこの仕事は勤まらないと言われた日岡は、自分の持っていた飲み物をいきなり組員の頭にかける。

激怒した組員は日岡を店の外に連れ出し、暴行を加える。

組員が刃物を取り出したところで、大上が現れる。

逮捕するぞと脅したうえで、上早の失踪事件について何か知らないかと詰問する。

ロケ地日野ビル
所在地〒737-0046
広島県呉市中通3丁目3-23

空手やっとったんか

大上は組員に殴られ負傷した日岡を近くの薬局に連れていく。

薬剤師の桃子(阿部純子)は傷のひどさに驚きながら、手当てをする。

ロケ地神田薬品
所在地〒737-0823
広島県呉市海岸2丁目3-7

この店はうちのシマじゃぁ

高木里佳子(真木よう子)はクラブ「梨子」のママである。

この地域は尾谷組の縄張りであったが、最近、加古村組の組員も店に出入りするようになった。

ある日、大上と日岡、そして、尾谷組の若頭・一之瀬守孝(江口洋介)がいるとき、加古村組の連中が入ってきた。

店内は一触即発の雰囲気になる。

ロケ地黄ビル
所在地〒737-0046
広島県呉市中通4丁目1-28

警察がこがいな事してええんか

尾谷組の若手組員が亡くなった。

里佳子は、その組員をよく可愛がっていた。

泣き崩れる里佳子。

大上と一計を案じた里佳子は、事件の関与が疑われる加古村組の組員を喫茶店に呼び出す。

ロケ地喫茶ぶらじる
所在地〒737-0046
広島県呉市中通4丁目1-28

3日で、加古村なんとかせぇ

一之瀬は、加古村組への報復を口にする。

大上は警察が何とかするからと、動かないように説得する。

一之瀬は3日だけ待つと言う。

大上は、上早の失踪事件について、ある人物を取調室で締め上げる。

日岡は、大上の取り調べがやり過ぎだとして、本部に電話しようとする。

周囲は日岡を止める。

そのとき、大上が取調室から出てきた。

「上早の遺体は無人島に埋められている」

ロケ地県民の浜
所在地〒737-0402
広島県呉市蒲刈町大浦

署長さん、わしの話聞いて、腰抜かさんで下さいよ

呉原東署に新聞記者の高坂隆文(中村獅童)が訪ねてきた。

署長に、大上の行き過ぎた捜査に関するネタをつかんでいると言う。

その内容を聞いた署長は大上を上早・失踪事件の捜査から外し、自宅謹慎とする。

ある夜、日岡が寮に帰ってくると、大上が部屋に上がり込み、ビールを飲んでいた。

日岡は机の側に置いていたある文書を、大上に気づかれぬよう、押し入れに仕舞う。

わしはもう綱の上に乗ってしもうとるんじゃ

大上が捜査から外れたことを知り、尾谷組が動く。

加古村組の上部組織・幹部を狙った銃撃事件を起こす。

大上は事態を収めるため、一之瀬と会う

しかし、良い返事は得られない。

その夜、日岡がクラブ「梨子」で待っていると、大上が現れた。

日岡は「こんなことしていると大上さんがつぶされる、もう止めましょう」と言う。

大上は「歩き続けるしかない」と意味深に言う。

店を出た大上は日岡と別れ、一人で歩き出す。

その日を境に、大上との連絡が取れなくなる。

ロケ地灰ヶ峰
所在地〒737-0005
広島県呉市阿賀町